2011.12.19 Takuichi Hirano
Note: Please use dB Calculator to translate linear value to dB. Vice versa.
(コメント)
熱あるものは電磁波を放射する。放射される電磁波の周波数スペクトルはプランクの黒体輻射の法則に従う。この電磁波が抵抗体に照射されると電磁波の電界により電圧が発生する。これが熱雑音となる。上式はこの熱雑音レベルを計算するためのものである[1]。
無線通信においては雑音レベルにより通信距離が制限されることになる。信号レベル(S)の雑音レベル(N)に対する比をS/N比と言い、通常はS/N比が十分大きな状態で通信を行う。S/N比のN[email protected],$H$7$F$OG.;(2;$K!"L5@~5!%7%9%F%`FbIt$GH/@8$9$k;(2;$,@Q;;$5$l$k!#$3$NL5@~5!%7%9%F%`$GH/@8$9$k;(2;$O;(2;;X?tNF(Noise Figure)と呼ばれる。NFの定義は[入力S/N]/[出力S/N]であり、出力S/Nは劣化して入力S/Nよりも小さくなるので1以上の値を取る(dB表示されることが多いので0dB以上となる)。無線機システムにおいて受信性能を決める一番重要なパラメータは初段の低雑音増幅器LNA(Low Noise Amplifier)のNFである[1]。無線機システムのNFと言う場合、熱雑音を除いた積算雑音成分をすべて(原因が分かっていることも、わかっていないことも含めて)NFに押しつけている。
(豆知識1)ネットワークアナライザのIF帯域幅
少し専門的な話になるが、高周波回路のSパラメータを測定するのにネットワークアナライザという機器が用いられる。この受信機はヘテロダイン受信(ミキサを使って中間周波数に変換する方式)を行う場合、中間周波数の帯域幅(IF Bandwidth)を指定することができるようになっている。熱雑音Pn=k T Bの式より、帯域幅Bを狭めることにより熱雑音を減らすことができる。したがって、熱雑音を減らす場合はIF帯域幅を小さくすることがよく行われる。しかし、IF帯域幅を小さくするということは時間領域で長く観測する(フーリエ変換の伸縮律)必要があるので、周波数スィープに多くの時間がかかることになる。
一般に、アンテナなどの開放系の測定では外来雑音が多いので、IF帯域幅を狭めるよりもアベレージング(数回の測定の平均を取る)方が雑音除去の効果が高いので、あまりIF帯域幅を気にしない。アベレージング回数は、Sパラメータの値が時間的に揺れなくなる程度に設定する。通常は8回から32回程度とすることが多い(私の場合)。しかし、閉回路、特に外来雑音の影響を受けにくいオンチップ測定などでは外来雑音よりも熱雑音の方が大きいのでアベレージングよりもIF帯域幅を狭めることが行われる(ということだと、私は思う)。どの程度IF帯域幅を狭めるかは場合によるが、少なくとも100Hz、場合によっては50Hz, 10Hzとすることがあるようである。1Hzに設定できる機器もあるが、周波数スィープに長い時間がかかるので、あまり用いられないと思う。
(豆知識2)誤り訂正符号
衛星放送や深宇宙探査など、どうしても大きなS/Nを取ることができない状況がある。アンテナや受信機などの性能向上でもどうにもS/Nを改善できない場合は誤り訂正符号を併用することになる。ビタビ(Viterbi)はこの衛星通信の分野の研究において強力なビタビアルゴリズムを開発し、起業(Qualcomm)して実用化まで行った[2]。現在の携帯電話にもQualcommのチップが使用されており、携帯電話システムの高性能化・小型化に大きく貢献している。
(豆知識3)宇宙背景放射
ガモフが提唱した宇宙のビッグバン理論によると宇宙は膨張(あるいは縮小)していることになる。熱を持つ物質が充満した宇宙が膨張している場合、この宇宙空間はそれらから黒体輻射される電磁波で満たされていることになる。これは宇宙マイクロ波背景放射と呼ばれる。ベル研のペンジアスとウィルソンは1964年に衛星放送受信機の雑音を減らす研究中にこの宇宙マイクロ波背景放射を偶然に発見した(実験で確認した)[3]。(この発見で1978年にノーベル物理学賞を受賞)アンテナを付けると雑音レベルは理論値よりも高くなり、アンテナを外すと雑音レベルは低くなることから外来のものであると判断できる。そして、雑音レベルはアンテナを向ける方向によらないことから、宇宙のあらゆる方向から電磁波が到来していることを計測し、ガモフの宇宙膨張説の検証につながったのは非常に興味深い話である。
References
Copyright(c) 2011 Takuichi Hirano